ネタバレを含むので、見てない方はそっと閉じてください
【何のために生きているのか】この壮大な問いを、ふと考えることがあると思う。
推しの子の最終話はその一つの答えを示していると感じた。
ルビーは大切なアクアを失ってなお、なぜ立ち上がることを選んだのか
それは後ろ向きなことなのか?
色々考えたけど、この立ち上がりは後ろ向きじゃないというのが
重要なポイントだ。
アニメや漫画には、ハッピーエンドをという気持ちはわかる。
確かに日常に疲れている現代人にはオアシスが必要だ。
だから、魅力的な登場人物と予測を裏切る展開の連続を提供してくれる
推しの子にも、癒しを求めて見ていた人も多かった。
しかし、その実、推しの子で伝えたかったのは
ただのハッピーエンドではなかったということをまず受け止めないといけない。
どちらかと言うと、本質的に日常に疲れている我々現代人を
心の底から湧き立たせようとした意欲作だった。
それゆえ、表面的な癒しを求めていた我々には、あの最後は突き刺さったのだ。
救いがなかったってこと?と
でも、違うんだ。
ルビーはなぜ立ち上がったのか。これは後ろ向きではない。
カナちゃんや、MEMちょもそうだ。
アクアに関わった人たち全員後ろ向きじゃない
ということをまず伝えたい。
まず、アクアの死がなぜこれほどにも突き刺さるのか?
それは、アクアが自分に素直であり、そして人々の心、一人一人に寄り添って、励まし
さりげなく守っていくという英雄的行為を最後は自ら死ぬということで達成したからだ
周りの人からすると、もうたまらない。
あんなアクアが死ぬ必要があったのか?と
でも、この感情は、アクアの死という取り返しのつかないことによって
より際立っている。
アクアを死なせないで!それは、ルビーやカナちゃん、関わった人たち、そして私たち読者の
切実な思いだろう。
でもルビーは立ち上がったんだ。
カミキヒカルを恨んでダークサイドに堕ちるのではなく、人々を照らすアイドルになるという方向で。
悲しみを背負いながら。
なぜだろうか?
私たち読者は、カミキヒカルではなく、この物語を作ったさらに上の存在に気づいている。それは作者だ。だから真の悪(神)である作者を恨むという行動をとっている人も多いと思う。
なぜ!!!??と
でもこれは、実はルビーの置かれている状況と同じなのである。
ルビーも神様なぜ!?と。アクアなぜ!?と
生きる道があったんじゃないか?と
でもなかった
なぜなら、原因はアクア以外の全員が弱かったからだ
アクアだけは強かった。死ぬ気で護ると決めていた。
でも、他に決めていたのは黒川あかねだけだ。
ルビーの身代わりとしてカミキヒカルに腹を刺されるところまで
いったところから、そうじゃないかと思う。
つまり、アクアの真の戦友はあかねだけだった。
だから、あかねだけには死ぬこと以外は話していた。
アクア自身が意識していたかは兎も角、アクアは自分が死ぬことで
ルビーを守り切り、そしてルビーが強く生きていく事を願っていた。
黒川あかねは、一番早く気づいていた。
だから、死に対して泣かなかった。ただ思ったのは「一緒に戦って死にたかった」と。
どういうこと!?先に行くのはズルいと。カッコつけすぎだと。
黒川あかねは、アクアを死ぬ気で守りたかった。でもアクアはそんなに弱くない。
だらか、アクアはあかねが死ぬことは絶対に許さなかったんだ
でも、ほかのメンバーは、悲しさゆえにすぐには受け取れなかった。
ルビーは悲しみの海に沈んだ。
そして
「私たちは生きていくことを選んだよ」
「死んでしまった君を時々思い出しながら」
「自分の生きる意味を探す道を選んだよ」
「それは簡単なことじゃないけれど」
「自分ができることを精一杯やれば」
「その先に自分の生きた理由があると信じて」
中略
そして
「君の命を丸ごと背負って」
つまり、アクアの死を受け入れて生きていくことを
「私たち」つまり、アクアに関わる全員が決めたということだ。
今まで以上に、仕事に立ち向かって
感情を殺しながら
それは、誰かを守ること
まずは、アクアの思いを守ること
少なくとも、それを託して亡くなったアクアの思いを守ること
だって、私たちが不貞腐れて現実逃避したり、死を選んだり
誰かを恨むことは、アクアが残してくれた想いじゃないから。
“自分の生きる”それ自体が、さらに言えば”良く生きる”
それだけで、アクアの想いに応えたことになる
それだけで「自分の生きる意味」になりうる
そして、さらにアクアがしてくれた事を振り返ると
ただ、相手を思う。死ぬ気で、感情を殺してでも護るということ。
それがアクアが残してくれた想いだと分かる。
つまりは、「照らす」ということ。
それは、実は、ルビーのママであるアイの想いとも重なる。
アイが、ルビーやアクアに抱いていた愛はそいういう事だ。
つまり、推しの子として、アイから受け継いだ
この強烈な愛(アイ)を伝えていくということだ。
そして、「私たち」はみんな戦友になった。
アクアという深い悲しみ背負いながらも、想いも同時に受け継いで
それが「君の命を丸ごと背負って」の意味だ。
ただ死んだという事実ではなく、その想いを受け止めて
強く、アクアが護ったように、私たちも護る戦いをはじめた。
それが、最終話のみるべきところだと思う。
「自分の生きる意味を探す道を選んだよ」
と言っているが。実は立ち上がったときにもう生きる意味は既に見つけていて
あとはそれを証明するだけの道を選んだとも言える。
だから、嘘も悲しみも全て使えるものは使って証明していくことができる。
心に強い芯は宿っているから、後ろ向きではない。
超前向き。
つまり、作者の意図は。
アクアの死、そしてルビーが立ち上がることを通じて
「私たち読者」も立ち上がることを期待し
アクアの想いを、作者の本質的な励ましの想いを
大切な誰かを守るために、日常に疲れるんではなく
死ぬ気で生き抜いて、未来に向かって
今日も「行ってきます!」をして欲しい
という願いの話なんだと
そう私は受け取った
「それはまるで 暗い程により輝く 夜空の星みたいに!」
暗い程に”より”の部分
作者には、現代は”それほどに暗い”と感じているという事だ
その危機感ゆえ、だからこそ逆説的により「輝け」と
願っていることが、この文章に込められていると思う